院長の吉野です。こんにちは。5月も下旬に入り、梅雨の足音が聞こえ始める時期になってきましたが、皆さん如何お過ごしでしょうか。東京などでは5月中旬の数日間、不順な天候が続き、肌寒いような日もありましたが、20日ごろから暑さが戻ってきました。全国的には既にかなり暑くなっており、北海道も含めて30℃前後まで気温の上がる日も現れてきました。いよいよ「夏」が近づいている事を思わせます。
但し本格的な夏の前には「梅雨」がやってきます。沖縄・奄美地方では既に梅雨入りしており、雨がちな天候となっています。沖縄と九州とは意外と距離があり、九州の梅雨入りはもう少し先かと思いますが、それでも例年5月末から6月初めにかけて、九州や四国を皮切りに、中国・近畿・東海・関東あたりまで、次々と梅雨入りしていきます。年によってはこの順番が入れ替わり、関東などが先に梅雨入りすることもあります。

そして5月も半ばを過ぎ、日差しがとても強くなってきました。実際に街では、早くも色よく日焼けしている方をちらほら見かけますし、かくいう私自身も知らないうちに日焼けしていました。連休明けに腕などの肌がヒリヒリするので変だと思っていたら、何人かから「先生、日焼けしましたね」などと言われ、初めて日焼けしたことを知りました。連休は旅行に行った訳でもないのに、歩いているだけで日焼けした様です。
実は5月から6月にかけては、日焼けに最も気をつけなければならない時期なのです。日焼けというと、7月から8月にかけての真夏の時期が最も強烈というイメージがありますが、必ずしもそうではありません。梅雨明け後の7~8月も確かに日差しは強いのですが、湿気が多いために、日差しはある程度ブロックされます。それに対して梅雨入り前の5月後半は、乾燥しているために日差しがダイレクトに地上に届いてくるのです。

そのように意外にも早く訪れる日焼けの季節、それに時として真夏並みとなる暑さに対しては、抜かりない対策が必要です。ただ暑さに関しては梅雨明け後の本格的な盛夏に比べて、まだしのぎやすいとは言えます。日中は盛夏並みの気温になったとしても、比較的カラッとしていますし、朝晩はしっかり冷え込むからです。従って未だ余裕のある今のうちに、暑さに慣れるための取り組みをしておきたいものです。

日焼け対策および本格的な暑さへの備えに関しては、近く日を改めて、詳しく解説していきたいと考えています。

さて前回のコラムでは、風邪やアレルギーを予防する、或いは動脈硬化に基づく疾患を防ぐ等の意味合いから、植物油の「摂取比率」が決定的に重要であること、具体的にはオメガ3系とオメガ6系が1:1または1:2が望ましいことを説明しました。ところが現実にはオメガ6系が過剰、一方でオメガ3系が不足となりやすく、結果としてアレルギーや動脈硬化が進展しやすい条件にあることも合わせて述べました。
なぜ我々の摂取する油は往々にして、圧倒的に「オメガ6優位」となってしまうのでしょうか。一つには、スーパー等で普通に売られている植物油が、ことごとくオメガ6優位の油となっているためです。つまり我々に馴染みの油、例えばコーン油、大豆油、菜種油、米油、さらにはこれらをミックスした「サラダ油」「てんぷら油」等は、軒並みオメガ6主体の油種構成となっているのです。
そのために、家庭で調理やドレッシング等に用いる油はもとより、レストランやファストフード等に於ける外食、スーパー等の総菜や弁当、コンビニ等のお菓子や加工食品は、その殆んどに於いてオメガ6主体の油を多用しています。その結果、自宅での自炊や外での外食、店で買ってきての食事、すなわち食生活全般に於いて、嫌がおうにも我々は「オメガ6漬け」となりかねない食事環境に置かれているのです。

一方では「魚離れ」の影響も見逃せません。日本人は古来、魚介類をたっぷり食べて健康を維持してきました。つい最近まで日本人は、世界的にも長寿かつ健康的であると評価されてきましたが、その理由の一つは魚をたくさん食べる事であるのは間違いありません。実際に海外でも魚介類の豊富な「和食」はヘルシーであるとして、健康に関心の高い人々にもてはやされています。
ところが現代の日本人は、次第に魚を食べなくなってしまいました。魚の購入量や消費量が目に見えて減少してきているのです。調理が面倒である、等の理由が挙げられていますが、対照的に肉の消費量は増え続けており、すっかり逆転してしまっています。前述の通り魚介類にはEPAやDHAといった「オメガ3系」が豊富に含まれていますが、魚を敬遠することによってオメガ3の摂取量がますます減少しつつあります。

さてそのようなオメガ6に傾いた油脂環境に於いて、少しでもオメガ3とオメガ6の摂取比率を適正化し、健康な心身を手に入れるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。それはごく単純化していうと、オメガ6を減らしてオメガ3を増やす、という事に尽きます。オメガ6を減らすには、一般に出回っている植物油、すなわち大豆油、コーン油、綿実油、それにサラダ油などの摂取を徹底して控える事が重要です。
具体的には、揚げ物など植物油を多量に用いる料理をできるだけ控え、炒め物の際にも、オリーブ油などオメガ6の少ない油を用い、しかも頻度を減らすことが大切です。外食も含め、可能な限り油気の少ない料理や商品を選び、いわば「減油」生活を心がける事が望まれます。一方でお勧めは、数少ないオメガ3油脂であるエゴマ油(シソ油)やアマニ油です。熱に弱いので加熱せず、ドレッシングなどに用いましょう。

そして何といっても、オメガ3の有力な供給源としての魚介類を積極的に摂取したいものです。保存や調理が大変だ、などと敬遠されがちではありますが、魚介類の最大の持ち味は、種類や調理法の「多様性」です。例えば主な寿司ネタだけで何十種類もあり、同じ魚種でも調理法が多数あります。季節や海域による変化も楽しむことができます。食べやすい食材から試し、少しずつレパートリーを増やしていきましょう。
オメガ3系を組み合わせた料理もあります。それはお魚にアマニ油、またはエゴマ油を加えたものです。イタリア料理の一つに「カルパッチョ」があり、主にオリーブ油を用いますが、その代わりにアマニ油などを使うのです。お好みの魚またはエビ、イカ、タコ、そして季節の野菜を盛り付け、そこにアマニ油をベースとしたドレッシングをかける、それだけでヘルシーなオメガ3をたっぷりと頂くことができます。

さて次回からは上述した「暑さ」への対策について、幅広い角度から考えてみたいと思います・・(続く)

蒲田よしのクリニック