新型コロナ罹患後あるいは新型コロナワクチン接種後に発症する筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME/CFS)に対するビタミンD補充療法の臨床試験が開始となり、約1カ月半が経ちました。順調に患者登録が進み、クラウドファンディングでも多くの浄財を頂きました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

 

この臨床研究で良好な結果が得られた場合、地域の病院やクリニックなど医療機関に於いて、難治とされているME/CFS症例に対する治療法の選択肢が大きく広がる事が期待できます。日本国民のみならず、全人類に対して大きな意義を持つ研究となる可能性さえあります。何とぞ宜しくご理解ご協力お願い致します。

 

さて前回は、ME/CFSに関連する腸内環境の悪化および酸化ストレス亢進に対して、ラドン温浴療法(放射線ホルミシス療法)がたいへん有効である、とお話ししました。実際に重篤なME/CFS症例であっても、倦怠感やブレインフォグ、ウツ状態、全身の筋肉痛など多彩な症状が、ラドン温浴によって軽減した方は少なくありません。

 

「酸化ストレス」が関与する疾患や体調不良は実に多数あります。動脈硬化に起因する冠動脈疾患や脳血管疾患はもとより、各種アレルギー疾患、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、各種ガン、うつ病などメンタル不調も、数ある病態の一つとして酸化ストレスが関与している、と多くの専門家から指摘されています。

 

なぜ現代人は酸化ストレスに見舞われているのでしょうか。人間が呼吸するたびに一定の割合で「活性酸素」が体内で発生しますが、我々はこの活性酸素を消去する能力を備えています。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)などの抗酸化酵素が幾つもあり、これが活性酸素の害から我々の体を守ってくれているのです。

 

ところが現代人は「抗酸化力」が著しく低下しています。加齢の影響もありますが、それだけでなくタバコ、排気ガス、食品添加物、農薬、トランス脂肪酸、睡眠不足、電磁波、社会的ストレス、各種医薬品・・などの影響が少なくありません。現代に生きる我々にとって、酸化ストレスをどう制御するかは決定的に重要です。

 

この重要な抗酸化力を向上させるための日常的な取り組みは様々あり、一つには「食事」が挙げられます。例えば新鮮な野菜や果物をたくさん食べる事は健康に良いとされていますが、その理由の一つに「抗酸化成分」の充分な摂取があります。そのような栄養素は多数ありますが、その代表の一つはビタミンCです。

 

実際にビタミンCを豊富に摂取する事により、抗酸化力が顕著に向上する事が証明されています。その結果、例えば肌のシミが気になる方がビタミンCを補給するとシミが消える事が少なくありませんが、これはビタミンCによって抗酸化酵素が誘導され、シミの原因となる活性酸素が消去される事が機序の一つです。

 

さてコロナワクチン接種後にME/CFSを発症するメカニズムは幾つか挙げられますが、その重大な要因の一つが酸化ストレスと言われております。例えば過剰となった活性酸素により、細胞内のミトコンドリアに於いてエネルギー産生が阻害され、それが原因となって慢性疲労やブレインフォグ等の症状が発生します。

 

すなわちミトコンドリアでは糖質や脂質などの栄養素を原料とし、酸素を付加する事によってATP(アデノシン3リン酸)が産生され、これが我々の重要なエネルギー源となりますが、そのATP産生の最終段階である電子伝達系に於いて、過剰な活性酸素によりATP産生が阻害され、様々な疲労症状が引き起こされるのです。

 

そのように酸化ストレスの亢進は、ミトコンドリアに於けるエネルギー産生経路を含め、多くの代謝経路に障害を与え、生体のホメオスタシスを傷害する大きな要因となります。コロナ後遺症およびコロナワクチン後遺症、そしてME/CFSに於いても、酸化ストレスをどう緩和するかが、治療法の大きな課題となっております。

 

そのような状況下、コロナワクチン後遺症などの治療法として大きな注目と期待を集め、実際に数多い医師が臨床応用している治療法の一つが「グルタチオン点滴」です。私の蒲田よしのクリニックでもグルタチオン点滴は大人気となっており、多い日には10名近い方がグルタチオン点滴を希望するほど大好評の点滴です。

 

グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンという3つのアミノ酸から構成される物質であり、生体内で生成されますが、加齢により生成が低下するとされています。医薬品やサプリメントもありますが、点滴が最も有効とされており、実際にサプリでは効果なかったが点滴は著効した、という方が少なくありません。

 

そのグルタチオンは、抗酸化酵素を誘導し、抗酸化力を向上させる事で生体を活性酸素の害から保護してくれます。いわば強力な「サビ落とし」の役割といえます。同時に体内の毒性成分を排除するための「解毒力」を向上させます。その結果としてミトコンドリアのエネルギー産生や代謝経路を活性化する作用が知られています。

 

グルタチオンで最も有力な適応症はパーキンソン病です。手指振戦や歩行障害などの症状を招くパーキンソン病は、中脳の「黒質」が活性酸素で傷害されて発症する事が証明されていますが、グルタチオン点滴により黒質への酸化ストレスが徐々に緩和され、半数以上のパーキンソン病患者の症状が軽減すると報告されています。

 

コロナワクチン後遺症に伴うME/CFSでは、グルタチオン点滴の有効性が国内外から多く報告されていますが、その有効性の根拠として一つには、ワクチンのスパイクタンパクが引き起こす慢性炎症、それに伴う酸化ストレスを緩和し、それにより傷害されていたミトコンドリア代謝や神経機能を改善させる事が指摘されています。

 

私の「蒲田よしのクリニック」でも、例えばコロナワクチン3回接種後に全身倦怠感、ブレインフォグ、ウツ症状、胸部苦痛など多彩な症状に見舞われた方が、グルタチオン点滴とラドン温浴を週1回ずつ施行し、鉄やビタミンDなどの栄養補給を行なった結果、3ヶ月以内で殆んどの症状が軽減した、などという症例が多数あります。

 

私と同じコロナワクチン後遺症の診療を行なっている仲間の医師の間でも、グルタチオン点滴の評価はたいへん高くなっています。クリニックによって治療法は多種多様ですが、各々のクリニック独自の治療にグルタチオン点滴を併用し、たいへん優れた臨床効果が得られた症例は、数えきれないほど多数報告されています。

 

そのように優れた臨床効果があり、専門家と評価と患者さんの人気が高いグルタチオン点滴ですが、あまりの需要の多さにより品薄になっていた時期がありました。発注をかけても薬品卸からの納品が途絶え、医療機関によっては点滴を中止していた所もあった程です。今は需給が多少は落ち着きましたが、相変わらずの人気ぶりです。

 

コロナワクチン後遺症やME/CFSに有効な点滴は、他にもあります。それについては日を改めてお話いたします・・(続く)

 

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