吉野です。こんにちは。連日のようにとても暑い日が続いていますが、皆さん夏バテなどしていませんでしょうか。全国各地で最高気温30℃以上の真夏日、あるいは地域によっては同35℃以上の猛暑日が続出しています。九州北部の豪雨災害に見舞われた地域でも暑さが増しており、被災者の方々やボランティアの方々は、復旧作業など大変だと思います。北海道でも所によっては本州並みの猛暑となっています。
これだけ暑さが続くと梅雨明け発表が気になるところでしたが、19日に中国・四国地方から関東甲信地方まで一気に梅雨明けしました。カンカン照りのわりに遅いな、という感じもしましたが、関東などの梅雨明けは平年より2日早いそうで、全般に決して遅れていた訳ではありません。ある気象予報士によると、15~17日の連休前後に北日本が大雨となり、その影響を見極めた上での梅雨明け発表となった、という事です。

梅雨明け前後は例年のように、とにかく暑くなります。よく「梅雨明け10日」と言いますが、梅雨明け直後の10日間くらいは、とりわけ晴れて気温が上がる傾向があります。そうだとすると、今がまさに梅雨明け10日の最も暑い時期、と言えそうです。しかも気象庁からは西日本~東日本にかけて「7月中~下旬は平年より高温傾向」という予報が出ており、まさにその通りの猛暑傾向となっています。
暑さ以外にも一つ異常な点があります。それは「雨が少ない」という事です。先日の福岡・大分両県に於ける大雨・洪水被害からは意外な印象を受けますが、九州北部や北陸など一部を除き、全国的には少雨の傾向が続いています。入梅以降も「空梅雨」の傾向だったのです。特に関東地方の荒川水系、利根川水系などでは渇水気味となっており、総じて例年の半分以下という少ない降水量です。

そのような「ジリジリした猛暑」に見舞われ、熱中症にかかる人も増えています。例えば7月10日から16日までの1週間で、熱中症のため救急搬送された人が全国で7680人に上っています。その前週は4241人、前々週は1914人でしたので、急激に増えていることが分かります。また7680人に救急搬送者のうち重症は2759人、死亡者は6人という数字が出ています。
熱中症による死亡例に関して記憶に新しいところでは、埼玉県で知的障害者が猛暑の車内に6時間も放置され、熱中症で死亡したという悲しい事例もありました。自動車の車内は直射日光が当たると、60℃から70℃くらいまで室温が上がる事もあり、とりわけ子供や老人、体が不自由な方などは、室内に閉じ込められるような事態を防止しなければなりません。

蒲田よしのクリニックに於いても、本格的な熱中症の方こそ見かけないものの、夏バテの方もしくは軽い熱中症気味の方は、それこそ毎日のようにいらっしゃいます。そのような方は単に暑さというだけでなく、日常の過労や睡眠不足、栄養バランスの乱れなどが隠れていることも少なくありません。多くの方々は「マイヤーズカクテル」や「グルタチオン」などの点滴を受けると、とりあえずはシャキッとして帰られます。

このブログでは先月から、夏の暑さに備えて「夏バテ予防法」などに関して、いくつかの角度から解説してきました。これらはとても大切な事ですし、今後も続けて解説していきたいと思うのですが、これだけ例年以上のペースで急速に暑くなってくると、夏バテ予防法を一たん脇に置いて、当面の急速な暑さに関する「熱中症予防」、もしくは夏バテや熱中症にかかった場合の対処法、治療法についての解説が求められそうです。
そこで今回から少しの間、熱中症と夏バテを撃退するための「即効の対処法」に関して記述したいと思います。とりわけ35℃前後、あるいはそれ以上の猛暑となった場合、先ず必要な事とは何でしょうか。最初に考えるべきは「日射を避ける」事です。日射の直撃を受けるのとそうでないのとでは、体への高温の影響にはかなりの差が生じます。とりわけ頭部への直射日光の直撃を避けることが第一のポイントです。

日光の直撃を避ける方法として、先ず挙げられる物に「帽子」があります。帽子はまさに頭をすっぽり包み込む様にかぶるため、頭部を守る一定の効果はありますが、その形状により効果に若干の差が生じます。例えば野球帽の場合、ツバの部分が前方にのみ設けられており、日照を遮断する効果は意外と限定的です。麦わら帽のように、全周にわたってツバのついた帽子の方が、日照の遮断という点ではより効果的です。
最近とりわけ有効性が評価されているのは「日傘」です。日傘は帽子と違って肌と密着せず、風通しも確保できるのがメリットです。また頭部を含む上半身全体を日照から遮断するため、暑さを軽減する上で意外と大きな威力を発揮します。実際に日傘を使用する人は男性も含め増えてきており、使用を開始してから夏バテしなくなった、などの変化を感じる人も少なくないようです。

次に「水分」の補給がたいへん重要です。熱中症に陥る人に共通する特徴として、水分不足が挙げられています。気温が上がる日中だけでなく、眠りについており、場合により飲酒する夜間にも熱中症が多発しているのは、水分不足がいかに熱中症を誘発するか、を如実に語っています。喉が渇いてから水を飲むのでは少々遅く、喉が渇く前から積極的に飲水する、という習慣が求められます。
それでは、どのような水を飲むのが正しいのでしょうか。基本的には「真水」を主体としますが、汗をたくさんかいた後は「塩分」の摂取も必要、とされています。確かにそれも一理ありますが、塩分を取り過ぎるとかえって喉が渇いてしまいますし、汗をかいた後に必要なのは塩分、すなわち塩化ナトリウムだけではありません。カリウムやカルシウム、マグネシウム、ビタミン各種も同様に補給する必要があります。

実際に摂取する水分として、よく推奨されるのが「スポーツ飲料」や「経口補水液」です。これらは塩分と糖質がそれぞれの比率で含まれており、胃腸から吸収されやすい状態に工夫されています。これらを活用するのも有効ですが、飲み過ぎには要注意です。というのは、含有されるブドウ糖や塩分の影響で、喉が渇きやすくなるためです。それに血糖値の上昇のリスクもあります。従って、ほどほどの飲用に留めるべきです。
日常生活では真水を主体とし、これら塩分や糖質を含んだ飲料水は、補足的に用いるのが原則です。ただ猛暑下で、熱中症になりかかっている時には、少し多めに飲んでも良いでしょう。意外と効果的なのが「梅干し」です。これは一定の塩分を含むほか各種ミネラル類も豊富です。また疲労回復に効果的なクエン酸なども含有しています。それと並んでレモンやスイカ、ナシなどの果物も熱中症予防には有効です。

いよいよ体が熱くなり、熱中症になりかかったら、体温を下げてやる必要が生じます。こういう時は「水」と「氷」の活用が有効です・・(続く)

蒲田よしのクリニック