吉野です。こんにちは。梅雨も後半に入り、蒸し暑い日が増え、早くも夏バテ気味の方が続出するようになってきましたが、皆さん如何お過ごしでしょうか。

それにしても福岡県や大分県などに於ける大雨被害は、本当にひどいものですね。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。福岡県筑後地方、大分県日田地方などのごく限られた地域に於いて、ほんの数時間の間に数百ミリもの豪雨が降り続いたのですから驚異的です。河川から溢れた濁流が家や車を押し流し、巨大な流木が道をふさいでいる光景には、本当に戦慄を覚えます。
それでは、なぜ狭い範囲に集中的に大量の雨が降るのでしょうか。気象庁の説明では、記録的な大雨の原因は、停滞する梅雨前線に向かって、南に位置する太平洋高気圧から湿った暖かい空気が大量に流れ込んだためとされています。前線の北側には大陸由来の高気圧があり、そこから吹き出した涼しい空気が湿った空気と前線付近でぶつかり合い、大雨に繋がったといいます。

今回の水害のニュースなどでは、「線状降水帯」という用語が頻繁に出てきました。これは限定された細長い区域に、激しい降雨をもたらす積乱雲が次から次へとかかり続ける気象現象を指します。これが発生すると、ある地域には時間当たり百ミリ単位の驚異的な豪雨がある一方で、そこから数十キロ離れた地域では殆んど降雨がない、などという極端な降雨の地域的な片寄りが生まれるのです。
線状降水帯に伴うゲリラ的な降雨はここ数年、どこかで必ず発生しています。記憶に新しい所では、2年前の平成27年9月に茨城県を中心に発生した「関東・東北豪雨」があります。同年9月の秋雨前線の時期に、関東から東北にかけ広い範囲で水害に見舞われましたが、とりわけ茨城県常総市などで鬼怒川が数カ所にわたり決壊し、1万棟を越える家屋が浸水しました。この時も鬼怒川沿いに線状降水帯が長いこと居座りました。

このような線状降水帯の出現を含むゲリラ的な豪雨被害は、ここ数年で明らかに増加、甚大化している印象があります。集中豪雨そのものは昔からありますが、その頻度、規模ともに著しくなっているのです。日常の肌感覚から言っても、近年の雨の降り方は以前よりも激しくなってきています。代表的な雨の季節である梅雨にしても、シトシトという降り方より、いきなりザーッという降り方の方が目立つようになってきました。
何故このように、気候が激しさを増しているのでしょうか。今年の5月に気象庁から「このままでは21世紀末までに東京が屋久島と同じ気温になる」という予測が出されました。屋久島といえば鹿児島の南に位置し、まさに亜熱帯の気候です。20世紀末からの100年間で、東京では4.5℃も平均気温が上がる、というシミュレーション結果だそうです。東京も今世紀末までに「亜熱帯」になってしまうのでしょうか。

夏場の暑さと伴に、地球温暖化が降雨の激しさに関係しているのは、どうやら確かなようです。この問題に関しては、また日を改めて検討したいと思います。

さて前回のブログでは、人間ほど汗をかく動物はいないこと、36.5℃という人間の体温は哺乳類の中では異例なほど低い事を説明した上で、それは一つには非常に発達した人間の「脳」を暑熱から守るためである、などとお話しました。脳はコンピューターと同じく熱に弱いため、特に上半身に多数の汗腺を備え、代謝を維持する上でギリギリの36.5℃という低めの体温を人間は受け入れているのです。

そのように人間は体温を低めに設定し、汗をたっぷりかいて「脳を冷やす」ことを優先しているのですが、そのために割を食っている場所が人体には幾つもあります。肺や心臓、肝臓、筋肉など多くの臓器・組織は冷えを嫌いますが、その代表格は「腸」です。腸というのは重要な消化器官であるばかりでなく、免疫の一つの中枢であるなど様々な機能をもつ臓器ですが、低温や冷えに弱いという特徴があります。
我々は日常感覚でも、冷えが腸にとってストレスとなる事を感じています。例えば冷たい飲み物を飲み過ぎたり、クーラーが利き過ぎていた場合などには、お腹がキリキリと痛み、下痢気味となる事があります。昔のことわざで「雷が鳴ったらヘソ隠せ」というのがありますが、これは経験的に、雷が鳴ると雨が降って気温が下がることが多い事から、腹部が冷えるのを防ぐために腹部を衣服などで覆いなさい、という教訓です。

腸は他方「免疫」にも深く関わっている臓器です。全身の免疫細胞のうち、およそ7割が腸管に分布しているとされています。従って腸内環境の善し悪しが、免疫力の強弱に大いに関わってくるのです。その腸内環境を左右する要素には栄養バランス、自律神経バランス、腸内細菌叢のバランスなど、様々なものが挙げられますが、一つの重要な要素として「体温」があります。
体温が35℃台もしくは34℃台まで低下すると、途端に腸内環境が悪化することが知られています。例えば腸内環境の重要な要素の一つに「消化酵素」がありますが、代謝酵素と同様、消化酵素は36℃以下では充分な活性が発揮されません。従って消化不良の傾向となり、腸内細菌叢の乱れやフードアレルギーなどを誘発し、うつ病などメンタル疾患や各種アレルギー疾患、さらにはガンなどの発症を招きやすくなります。

さて近年、そのように35℃台や34℃台という低体温の方が明らかに増えてきていますが、それにはどのような理由があるのでしょうか。様々な要因が考えられますが、その一つに「冷房」の使い過ぎがあります・・(続く)

蒲田よしのクリニック