前回は、蒲田よしのクリニックでは定番の点滴となっている「マイヤーズカクテル」についてお話しました。この点滴はビタミンB群がバランスよく配合されており、慢性疲労やブレインフォグなど様々な体調不良に対して、素早い効果を発揮します。ワクチン接種後の慢性疲労症候群などにも有効な症例が多数あります。

 

最近でこそ、異常なほど人気が高いグルタチオン点滴にやや押され気味となっていますが、蒲田よしのクリニックのオープン以来、13年間以上も根強い人気を集めてきました。私や看護師、事務員なども、風邪気味など体調不良の際には急遽マイヤーズカクテルを施行し、体調を急速に回復させて戦線に復帰している程です。

 

マイヤーズカクテルを始めとする数々の点滴の中にあって、希望者数こそ少な目ながら、とびきり強力な効果を発揮し、常連患者からもスタッフからも一目置かれている優れた点滴があります。それは「高濃度ビタミンC点滴」です。これは読んで字のごとく高濃度のビタミンCを点滴として体内に取り入れる治療法です。

 

点滴に使用するビタミンCの量は25gから始まり、50g、75g、さらには100gを使用する場合もあります。一部の医療機関では12.5gもありますが、一般には25gを使用する方が多くなっています。一方でガン患者は50g以上を使用するケースが多く、疾患や病状、治療効果の程度などによって、投与量をサジ加減しております。

 

ビタミンC点滴に於ける25gや50gという投与量が如何に多いかは、一般的な点滴での投与量と比較すれば一目瞭然です。市中病院で食欲不振等の患者に点滴を施行する場合、保険適応で認められた投与量は通常0.5g、特例でも1.0gまでです。それ以上は保険適応で認められていません。それだけ飛び抜けた投与量なのです。

 

なぜ敢えてその様な「超大量」のビタミンCを使用するかお話する前に、ビタミンCが如何に我々人間にとって重要な栄養素であるかを説明したいと思います。ビタミンCが重要な栄養素である事は子供でさえも知っており、風邪を予防するためにビタミンCの多い野菜を食べるのが大切な事は、肌感覚で理解できるものです。

 

実は我々人間はビタミンCを体内で合成できないのです。多くの哺乳類はビタミンCを合成できるので、必ずしも野菜を食べなくとも生きていけます。しかし人間は一部のネズミやサルと同様にビタミンCを合成できないので、毎日せっせと野菜や果物などを食べ、ビタミンCを補給し続けなければならない宿命にあるのです。

 

そのためビタミンC欠乏による深刻な病気や体調不良が、古来より人類を苦しめてきました。代表的なものに「壊血病」があります。これはビタミンC欠乏によって歯肉出血から始まり、全身各所で重篤な出血性病変が進行し、やがて死に至る病です。大航海時代などに多くの船員たちが死を遂げ、不治の病と恐れられました。

 

ビタミンCの作用や効果は実に多彩です。風邪やインフルエンザなどウイルス感染の罹患や重症化の予防、ガン細胞増殖の抑制、皮膚などのコラーゲン形成、外傷や疲労からの回復促進、副腎などに於けるホルモン生合成促進、ストレス耐性の向上、抗酸化作用、出血傾向抑制・・など、それこそ枚挙にいとまがありません。

 

そうした重要な栄養素であるビタミンCが豊富な食品は実に多数あります。多くの野菜や果物、例えばレモン、パセリ、キャベツ、グアバ、ピーマン、イチゴ、ブロッコリー、ジャガイモ、キウイ、ゴーヤ・・など、数えたらキリがありません。それでも種々の要因により、ビタミンCはとても欠乏しやすい栄養素なのです。

 

ビタミンCが欠乏しやすい要因は様々あります。我々現代人はストレスが多く、種々の化学物質に晒されているため、ビタミンCの消費量が多くなっています。一方で我々が日常的に摂取している各種の加工食品の多くには、ビタミンCが殆んど含まれていません。そのため我々の多くは深刻なビタミンC欠乏に陥っています。

 

欠乏しやすいビタミンCを補給するには、上述したようなビタミンCが豊富な食品をこまめに摂取する事が大切ですが、それでも足りない場合は、良質なサプリメントで補充する事も必要となってきます。それと並んで、今回のテーマである高濃度ビタミンC点滴は、別な意味で有効なビタミンC補充方法となっております。

 

高濃度のビタミンCを点滴で体内に注入する方法には、どのような医学的な意義があるのでしょうか。実はビタミンCを点滴で注入する方法は、日常的なビタミンCの補充とは異なった意義があります。これはビタミンCの地道な補給というよりは、高濃度のビタミンCを注入する事による一種の「ショック療法」といえます。

 

点滴で体内に注入された多量のビタミンCは、抗酸化力向上など様々な作用を強力に発揮するだけでなく、体内で過酸化水素(H2O2)を多量に発生させます。これは人体の正常細胞ではカタラーゼという酵素により解毒されるため無毒ですが、ガン細胞にはカタラーゼがないため解毒できず、ガン細胞は衰弱し死に至ります。

 

すなわち高濃度ビタミンCの働きにより、ガン細胞は衰弱し死滅する一方で正常細胞は正常に保たれる、という好都合な臨床効果が得られる事になります。実際にガン患者が高濃度ビタミンC点滴を繰り返し行なうと、ガンが縮小する一方、食欲不振等の症状が軽減する、という好ましい効能が得られる事は少なくありません。

 

これは一言でいうと「生活の質(QOL)」の向上、という事ができます。実際に世界中で高濃度ビタミンC点滴の研究が進められていますが、日本では点滴療法研究会が「高濃度ビタミンC点滴療法とQOL向上」に関する臨床研究を実施し、世界の著名な医学会での発表と学術誌への論文投稿を行ない、高く評価されています。

 

蒲田よしのクリニックに於いても、ガンの患者さんに対してラドン温浴などと併用し、高濃度ビタミンC点滴療法を積極的に施行しております。ガンの方々の事情も様々で、中にはステージ4の進行ガンとなり来られる方も少なくありません。そのような難しい病状の方であっても、上述のQOLが向上するケースは多いのです。

 

一方で最近2~3年は、コロナワクチン接種後の筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME/CFS)症例の方々が多く来院されています。それに対してはラドン温浴と並んでグルタチオン点滴、栄養療法などを中心に治療を組み立てていますが、一部の方は高濃度ビタミンC点滴療法に取り組み、概ね良好な治療成績を挙げています。

 

・・(続く)

 

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