若い女性の「痩せ願望」に潜む健康リスク~過度なダイエットが心と体に及ぼす影響~
「もっと痩せたい」「細い体形になりたい」。このような願望を持つ女性は少なくありません。特に若い世代では、SNSなどを通じてモデルやインフルエンサーの体形を目にする機会が多く、知らず知らずのうちに「痩せていることが美しい」という価値観に影響されることがあります。
しかし、必要以上に痩せようとして食事量を減らし続けると、健康を損なう恐れがあります。美容のために始めたダイエットが、かえって肌や髪のトラブルを招き、心身の不調につながることもあるのです。
若い女性の食事量は十分でしょうか?
厚生労働省の「令和6年 国民健康・栄養調査」では、20歳代女性のエネルギー摂取量が少ないことが課題の一つとして浮かび上がっています。食事を控えることが習慣化し、必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取できていない方もいると考えられます。
もちろん、必要なエネルギー量は年齢や体格、運動量などによって異なります。しかし、仕事や学業、家事などで日々活動している若い女性が、極端な食事制限を続ければ、体に必要な栄養が不足する可能性があります。
特に注意したいのが、エネルギーだけでなく、タンパク質、鉄、ビタミンなどの不足です。食事の量を減らすことに意識が向きすぎると、体を維持するために必要な栄養まで削ってしまうことがあります。
「痩せているのに不調」という問題
当院にも、若い女性が体調不良を訴えて来院されます。診療の現場では、痩せ形の体格で、血液検査などから鉄不足が疑われる方も少なくありません。
鉄は、全身に酸素を運ぶために必要な成分です。不足すると、貧血のほか、疲れやすさ、息切れ、動悸、頭痛などの症状が現れることがあります。また、集中力の低下や気分の落ち込みなど、日常生活に影響する不調につながる場合もあります。
さらに、食事から十分な栄養を摂れない状態が続くと、肌荒れや抜け毛、冷え、便秘、月経不順などが起こることもあります。体重が軽いからといって、必ずしも健康とは限りません。見た目だけでは分からない栄養不足にも目を向けることが大切です。
食べないダイエットは、かえって逆効果?
極端な食事制限を続けると、体はエネルギー不足に対応するため、消費エネルギーを抑える方向に働きます。また、タンパク質などが不足すると筋肉量が減少し、日常生活で消費するエネルギーも少なくなる可能性があります。
その結果、以前と同じようには体重が減らなくなったり、ダイエットをやめた後に体重が戻りやすくなったりすることがあります。食事を減らせば減らすほど痩せやすくなる、というわけではないのです。
健康的な体づくりには、必要なエネルギーを確保しながら、肉や魚、卵、大豆製品などからタンパク質を摂り、野菜や果物なども組み合わせて、栄養バランスを整えることが重要です。
心身の不調は、仕事や日常生活にも影響する
栄養不足による影響は、体の症状だけにとどまりません。疲労感や集中力の低下、意欲の減退などによって、仕事や学業の効率が落ちることもあります。
出勤や登校はできていても、本来の力を発揮できない状態は「プレゼンティーズム」と呼ばれます。心身の不調を抱えながら無理を続けることは、本人の生活の質を低下させるだけでなく、職場や社会にとっても損失となります。
もちろん、若い女性のメンタル不調には、仕事や人間関係、経済的な問題など、さまざまな要因が関係します。すべてを食生活だけで説明することはできません。しかし、日々の食事や栄養状態が心身の健康を支える重要な土台であることは、忘れてはならないでしょう。
大切なのは、体重よりも健康を意識すること
「痩せたい」という気持ちそのものが悪いわけではありません。ただし、健康を損なってまで体重を減らす必要はありません。大切なのは、体重や見た目だけで自分を評価するのではなく、疲れにくい体、安定した気分、十分な集中力、健やかな肌や髪など、日々の生活を支える健康にも目を向けることです。
食事を抜く、主食を極端に減らす、体重の数字に強くこだわるといった習慣がある方は、一度ご自身の食生活を振り返ってみてください。疲れやすさ、めまい、月経不順などが続く場合には、無理なダイエットを中断し、医療機関に相談することも大切です。
美容と健康は、本来、対立するものではありません。十分な栄養を摂り、心身を健やかに保つことこそが、長い目で見た美しさにつながります。「痩せること」だけを目標にするのではなく、「健康に毎日を過ごせる体」を目指すことが、これからのダイエットには必要ではないでしょうか。






