「瘦せ願望」も程度問題かと・・若い女性を襲う「プレゼンティーズム」とは!?
20代をはじめとする若い女性の間で、過度な「痩せ願望」や極端な食事制限が広がり、その結果として身体面だけでなく、メンタル面にも様々な不調をきたしている方が少なくありません。これは決して見過ごすことのできない問題だと感じています。
厚労省の「令和6年 国民健康・栄養調査」によれば、20代女性の1日当たりの平均摂取エネルギーはわずか1680kcalとされています。この数字は、食糧事情が極めて厳しく、十分な食事をとることができなかった終戦直後の日本人よりも少ない水準であり、現在の日本の食生活としては驚くべき状況とも言えます。
1680kcalという摂取量は、中肉中背の糖尿病患者などに対して設定される「カロリー制限食」とほぼ同程度の水準です。毎日仕事に通い、家事やその他の活動も行っている若い女性にとって、それが十分なエネルギー量であるとは考えにくいでしょう。
ところが、特に必要性のない若い女性が、こうした「制限食」に近い食生活を長期間続けているケースがあります。そして、その結果として、体調不良や精神的な不調だけでなく、肌荒れ、抜け毛、シワなどの美容上の問題まで生じています。「きれいになるため」に始めたダイエットが、逆に美容面でのトラブルを引き起こしてしまうという、何とも皮肉な状況です。
私が経営する「蒲田よしのクリニック」にも、20代前後の若い女性が数多く来院されます。その中で、半数を超える方が「痩せ」の体形です。そして、全員に当てはまるわけではありませんが、診察や会話の中から「もっと痩せたい」という思いが伝わってくる方も少なくありません。さらに血液検査を行うと、9割以上の方に鉄欠乏が認められます。
また、食事を極端に減らすことは、必ずしも「痩せやすい体」を作ることにはなりません。特に摂取エネルギーだけでなく、タンパク質まで極端に不足すると、身体の代謝そのものが低下してしまいます。その結果、脂肪を効率よく燃焼することが難しくなり、むしろ長期的には「痩せにくく、太りやすい」体質につながる可能性があります。
こうした偏った食生活によって心身のコンディションを崩してしまうと、仕事や社会活動、さらには日々の生活そのものにも影響が及びます。これは若い女性だけの問題ではなく、男性や中年以降の女性にも共通する部分がありますが、体調不良を原因とした欠勤や離職、そして「プレゼンティーズム」の増加にもつながります。
プレゼンティーズムとは、出勤自体はしているものの、身体や精神の不調によって仕事の能率やパフォーマンスが大きく落ちている状態を指します。簡単に言えば、職場の自分の席には座っているのに、「頭も体も思うように働かない」という状態です。
この問題については、新聞などでも時折取り上げられています。数カ月前の日経新聞では、20代を含む若い女性のメンタル不調が増えていることが1面で報じられ、また別の紙面では、中小企業においても「うつ」が増加していることへの警鐘が鳴らされていました。
こうした若い女性の心身の不調が、社会全体にも何らかの影響を及ぼしている可能性があります。その一つとして考えられるのが、女性の「社会進出の遅れ」です。女性の就業率そのものは大きく上昇していますが、一方で、管理職や経営層を目指す意欲、あるいは独立して起業しようとする志向が低下しているとの報道もあります。
もし、日々の食生活や栄養バランスの乱れが、個人の健康や幸福を損なうだけでなく、仕事の能力や社会活動にも影響を及ぼし、結果として社会全体にも一定の損失を生じさせているのだとすれば、これは何とか改善していかなければならない問題です。
「痩せること」ばかりに目を向けるのではなく、健康を維持しながら十分な栄養を摂ることの大切さを、もっと多くの方に知っていただく必要があります。
若い女性をはじめ、現代人の食生活や栄養バランスをどのように改善していけばよいのかについては、また改めて考えてみたいと思います。
蒲田よしのクリニック






