難治の慢性疲労症候群にも治療法があった!背景となる「腸モレ」治すビタミンとは!?
Facebookを開くと、時折ちょうど1年前~数年前に投稿した自分自身のコラムが、「過去の思い出」として現れてきます。例えば先日の元旦には、ちょうど2年前である2023年1月1日の記事として、以下のような私自身のショートコラムが現れてきて、懐かしく感じると共に、せっかくの機会なので改めてシェアしました。
「もはや国もワク★ン後遺症の実態を無視できない!今年は後遺症治療を行なう医師を倍増し、全ての後遺症患者に治療を提供する事、一般病院で未治療の後遺症患者を、後遺症診療を行なう医師へと導く仕組み作りが急務!ワク★ン後遺症を奇禍として抜本的な医療改革を目指せ!」
上記にある「★」とは、もちろん「チ」です。当時は「ワクチン後遺症」という呼称に一定の反発もあったのですが、今ではほぼ市民権を得ており、時流の変化も感じます。しかしワクチン後遺症が解決しつつあるとは、決して未だ言えない状況です。解決に向かっている要素と、全く放置されている要素とが混在しているのです。
ワクチン接種による健康被害(ワクチン後遺症)の存在がようやく認知され始め、前回ご説明した通り、その病態が少しずつ明らかになってきました。一方で今回からお話する通り、治療法も世界中で研究、臨床応用されつつあり、決して治療法のない疾患ではなくなってきました。しかし解決には程遠い要素も少なくありません。
その解決に程遠い要素の一つが2年前のコラムにもある「後遺症治療を行なう医師を倍増し、全ての後遺症患者に治療を提供」する取り組み、そして今一つが「一般病院で未治療の後遺症患者を、後遺症診療を行なう医師へと導く」仕組み作り、といえます。つまり2年が経過しても、その歩みは遅々として進んでいないのです。
これらの課題、すなわち後遺症治療を行なう医師の倍増、全ての患者への治療の提供、そして後遺症診療を行なう医師への患者の橋渡しについては、各々日を改めて詳述したいと思います。これらは表現を換えると、後遺症診療の量的な拡大と充実、そして後遺症版「病診連携」システム構築、という事が出来ます。
今回はワクチン後遺症に対する治療法について、少し深掘りしてお話したいと思います。前回までのブログで繰り返し説明した通り、ワクチン後遺症(ワクチン接種後症候群)やコロナ感染後の体調不良(コロナ後遺症)で出現する多彩な症状の主要な部分はME/CFS(筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群)で説明がつくとされています。
前回はME/CFSの病態について簡単に解説しました。すなわちME/CFSでは各種の神経接合部に於いて、神経受容体に対する自己抗体が働き慢性炎症が発生している事、ミトコンドリア内で酸化ストレスが亢進し、エネルギー産生が著しく阻害される事などにより、慢性疲労や複雑な神経症状が引き起こされている、と説明しました。
そのような病態解明を糸口として、様々な治療法が世界中で試みられ、一部は各国の治療プロトコールに採用されています。病態としては自己抗体による慢性炎症や免疫異常、酸化ストレス、エネルギー代謝異常などのお話をしましたが、他にも血流障害、栄養バランス失調、腸内環境悪化など、様々な病態が指摘されています。
私が2022年春より共同運営している「後遺症研究会」では全国200名近くの会員医師らが、自身のクリニックや病院に於ける治療経験や、主として海外からの医学論文など関連情報の共有と分析、討論を日常的に続けております。厚労省や主要医学会、医師会などが遅々として活動を進めない状況下、少しずつですが診療情報が蓄積してきました。
先ず手始めに、私の経営する「蒲田よしのクリニック」に於ける治療経験をお話したいと思います。私のクリニックは元々ウツなどメンタル不調や慢性疲労、自律神経失調などの患者が多数を占めており、それらの背景としてビタミンB群欠乏などの栄養解析を重視していますが、ME/CFSに於いても同様に栄養解析が重要なプロセスとなります。
例えばME/CFSで高頻度にみられる集中力・記憶力の低下、それにブレインフォグ(頭がボーっとする異常感覚)などの症状がある患者では、高確率で「ビタミンB群欠乏」が認められます。これは一般的な肝機能の項目であるAST・ALT(以前は各々GOT・GPT)が低値(20以下)である事などで総合的に判定します。
女性であれば、多くの患者でこれに「鉄欠乏」が加わります。これは血清フェリチン値で判定します。元々10代中頃~50代の女性では90%以上で鉄欠乏がみられますが、鉄はビタミンB群と並んで、神経伝達物質の生合成やミトコンドリア代謝に重要な役割を果たしており、これが欠乏するとME/CFSの症状が非常に強く現れがちとなっております。
近年ではこれに加え「ビタミンⅮ欠乏」がたいへん脚光を浴びております。ビタミンⅮほど多くの作用が新たに判明し、注目されているビタミンはありません。元旦などのブログでもお話しましたが、例えばビタミンⅮは、コロナやインフルエンザなどウイルス感染症の治療や予防に、たいへん大きな役割を果たしています。
ME/CFSの治療や重症防止に於いてもビタミンⅮは非常に注目されています。全身倦怠感やブレインフォグなどの症状がビタミンⅮ投与により軽減する、といった研究結果が世界中から多数、報告されています。後日改めて説明しますが、私が理事を務めるワクチン問題研究会では、ME/CFSに対する「ビタミンⅮ補充療法」臨床試験を実施中です。
ビタミンDがME/CFSの回復に如何なる機序で働くかは未だ定説がありませんが、一つの機序として、小腸上皮粘膜に於ける細胞間タイトジャンクションの維持・強化という働きがあります。この小腸粘膜の細胞間に「すき間」が生じると、未消化のタンパク質が異常吸収されて「リーキーガット症候群」を引き起こし、ME/CFSの増悪を招きます。
ビタミンDはこのタイトジャンクションを維持・強化する上で最重要な栄養素の一つです。ビタミンDを補充する事によって小腸粘膜の「すき間」を防止し、タンパク質の消化吸収を正常化する事によってリーキーガット症候群を予防し、ひいてはME/CFSの症状の緩和に貢献している事が、世界中の研究によって分かってきました。
私の仲間である兵庫県の医師は、自身のクリニックに於いて28名のME/CFS患者に対し「ビタミンⅮ補充療法」を実施し、非常に優れた治療成績を打ち出しました。ビタミンDを食事や日光浴、それにサプリ内服で補充したところ、ME/CFSの症状が殆んどの患者で改善しました。これを基に、前出のビタミンⅮ臨床試験の実施に繋がりました。
この小腸粘膜など腸内環境の改善に役立つ治療法は、他にもあります。一つは「ラドン温浴療法(放射線ホルミシス療法)」です。次回はラドン温浴療法などについてお話します‥(続く)