院長の吉野です。皆さんこんにちは。日による寒暖の差がたいへん大きくなっていますが、如何お過ごしでしょうか。
天気予報で説明がありましたが、この3月は1年で最も寒暖差が大きい月だそうです。例えば前日と10℃以上の気温差のある日数は、3月がダントツで1位、4月と2月がそれに続き、あとは10月などの秋となります。春先は秋以上に、気温の変動が激しい季節なのです。着ていく服を選ぶのも一苦労で、厚着をしていけば日中は暑いし、薄着をしていけば朝晩とても寒いです。

さて東京では全国で最も早く、21日に桜の開花が発表となりました。東京で最も早く桜が咲いたのは、実に9年ぶりの事だそうです。21日といえば冷たい雨が降った日なので、意外な感じを持った方も多いのではないでしょうか。思い返すと、その前日および前々日は彼岸の連休でしたが、かなり暖かかったので、その勢いもあり咲いたのではないかと思われます。
とはいえ街を歩いていても、桜が咲いた、という実感はあまり湧いてきません。JR蒲田駅前にある大きな桜の木なども含め、多くの木はまだ殆んどツボミの状態で、目に見える形での「開花」には多少早い状態です。東京地方の場合、開花を判断する「標準木」は靖国神社の敷地内にありますが、今年は何かのはずみで、かなり早く咲いてしまったのではないかと思われます。
それにここ数日は肌寒い日が続いており、早くも花冷えの風情です。今年は満開までの期間も、寒気の南下などのために低めの気温が続くと予想されており、満開の時期は若干遅くなるという話です。別の見方をすれば桜の花を長く楽しめる、という事になりそうです。花冷えではお花見も寒くて大変ですが、長い期間にわたって楽しめるのは嬉しいことです。防寒対策をしっかりしてお花見に出かけたいものです。

ただし毎年の事ではありますが、お花見の時期に重なる形で「花粉症」が猛威を振るっています。花粉の出どころはもちろん桜ではなく、スギやヒノキなどの針葉樹ですが、ひどい花粉症のせいでお花見にも出かけられない、という方が少なくありません。梅や桜が咲き誇る春は、うららかで穏やかな気分になる時期である一方、花粉症のある方にとっては、外出もままならない憂うつな季節となっています。
花粉症の陰に隠れて、風邪がなお流行し続けています。インフルエンザはさすがに沈静化しましたが、熱の出ない風邪、例えば咳や鼻水、のどの痛みなどが1週間から2週間、あるいはそれ以上にわたって長引くような風邪が出没しています。なかには鼻炎症状が主体のため、花粉症と区別がつかないような方も多数おります。この時期は患者さんから「風邪ですか、それとも花粉症ですか」などと質問されることが多くなります。
風邪と花粉症は発症メカニズムが異なるのですが、私の印象として、両者が合併することは決して少なくないようです。つまり花粉症特有の鼻水や目の痒みに加えて、喉の痛みや咳などの風邪症状が加わるのです。メカニズムは違っても、病気の土俵は同じ鼻や喉などの「粘膜」です。花粉症で粘膜が荒れると風邪のウイルスが侵入しやすく、また風邪のウイルスが刺激となって花粉症の症状が誘発される、という関連がありそうです。

さて前回のブログで、風邪やインフルエンザなどの予防に於いて重要な役割を果たす「免疫力」には、抗体タンパクの関わる獲得免疫、マクロファージなどによる自然免疫と並んで、各種酵素が働く細胞内免疫という3つのシステムがある、と説明しました。そして獲得免疫は高度なシステムではあるものの、迅速かつ柔軟に働くのはむしろ自然免疫や細胞内免疫の方である、ともお話しました。
とりわけ細胞内免疫は、ウイルスなど病原菌の排除に働くだけでなく、各種有害物質の解毒や古くなったタンパク質のリサイクルなどにも重要な役割を果たしています。いうなれば細胞の、そして体の「お掃除役」としての位置づけです。そのように体内のお掃除をしてくれる細胞内免疫を活性化することは、風邪やインフルエンザなどの予防に役立つだけでなく、各種の病気の予防や若返り、体調の維持に欠かせません。

その細胞内免疫を活性化する上で大切な要素の一つが「食事と栄養」です。例えば「風邪を予防するためにリンゴを食べましょう」などと呼び掛けているのは、リンゴに風邪を予防する上で有効な栄養成分がたくさん含まれているためです。それと伴に、疲労回復やガン予防の効果もあることが知られています。昔から「リンゴ赤くなると医者青くなる」などと言われていましたが、リンゴの健康上の効能を先人は知っていたのです。
リンゴに限らず、風邪や花粉症を予防し、疲労回復などに有効な食材としては、トマト、ニンジン、ブロッコリー、ミカン、ニンニク、ショウガ、レモン、パセリ、ネギ、タマネギ、イチゴ、セロリなど多数の野菜や果物が挙げられます。食材にはそれぞれ有効成分の含有量に違いがあり、健康上の効果にも得意分野がありますが、全体として野菜や果物を日常的にたっぷりと摂取することが、何より重要です。

野菜や果物などの食材には、どのような有効成分が含まれているのでしょうか。ビタミンCやビタミンB群などはよく知られており、その作用に関しては前述しましたが、それ以外に様々な「抗酸化物質」が含まれています。代表的なものとしては、トマトやリンゴに含まれるリコピン、カボチャやニンジンに含まれるベータカロチン、緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボンなどが挙げられます。
これら抗酸化物質が、体内ではどのように働いているのでしょうか。食材に含まれる抗酸化物質は多種類にわたり、また体内には元々備わっている抗酸化物質が存在します。内在および外来の抗酸化物質が、協働して様々な抗酸化作用、解毒作用、さらに免疫力向上などに寄与しています。すなわち抗酸化力とは、自前の抗酸化力に食事からの補給を加味した「総合力」により発揮されるのです。
例えば体内にはグルタチオンという抗酸化物質が肝臓を中心に備蓄されており、有害物質の解毒や疲労回復、動脈硬化抑制などの作用に当たっていますが、加齢やストレス、タバコ、睡眠不足などの影響で減少してしまいます。このような抗酸化物質の減少が老化や病気の発症に関わっているのですが、これを補うのが日常的な食事からの各種抗酸化物質の補給なのです。

それでは抗酸化物質さえ充分に摂取していれば、風邪や花粉症などの病気には罹ることがないのでしょうか。ところが現実はそう甘くありません。抗酸化力、免疫力を著しく低下させるものが存在するのです。その一つが「良くない油」です・・(続く)

蒲田よしのクリニック