院長の吉野です。こんにちは。残暑が厳しい中、皆さん元気にお過ごしでしょうか。

台風7号が関東から東北、北海道の東岸を北上し、東日本から北日本の各地に被害をもたらしました。豪雨や洪水などに遭われた方々に、心からお見舞い申し上げます。
この台風の余波で、17日の関東地方は「熱波」に襲われました。台風の進路の影響で、北寄りの強風が山越えとなり、時ならぬフェーン現象を引き起こしたのです。群馬県の館林市では39℃を超える猛暑となったのをはじめ、関東甲信越を中心に軒並み35℃以上の高温となりました。まさに燃えるような暑さです。
この猛暑の影響もあり、ひどい怠さなど、体の不調を訴える方が続出しています。電車内などでも、朝っぱらからウトウトしている方が目立ちます。中には頑丈そうな男性にも関わらず、座席にへばりつきそうになって寝込んでいる人もいます。暑さに加え、深夜のオリンピック中継を見て、寝不足になっている人も多いのではないでしょうか。

そのオリンピックですが、現地のリオデジャネイロが余りにも日本との時差が大きいため、私は生中継で観戦するのを諦めてしまいました。日中や夕方にも録画やダイジェストは放送されますが、「生」で見るには夜10時から翌朝まで起きていなければなりません。本気でテレビ観戦に入れ込むと、それこそ連日の徹夜になってしまうからです。
夏場のオリンピックということで一瞬、心配になりました。南米のリオはさぞかし暑かろう、と。しかしながらその次の瞬間、南米は南半球のため、今は冬であることに気付きました。言われてみれば、現地の最高気温は夏場の日本よりも明らかに涼しくなっています。また昼よりも夜が長いせいか、どこか冬季大会のような雰囲気もあります。

翻って4年後に開催予定の東京オリンピックは、正真正銘の「真夏」に開かれることが決定しています。リオの過ごしやすい大会とは対照的に、とんでもない暑い気候となることが懸念されます。一方で前回1964年の東京大会は秋の10月に行なわれ、その開会式の日がそのまま「体育の日」に制定されたのは皆さんご承知のことです。
私だけでなく周囲の人も口々に「何で真夏にオリンピックを開くのか。涼しい10月あたりに開けばいいのに・・」と疑問を語ります。秋に開催すれば快適で安全なのは皆分かっているはずですが、夏季に開くことはルールで決まっている事なのだそうです。それでは、なぜ夏季オリンピックは「真夏」に開くのでしょうか。
ある解説によれば、それは米国など西側主要国の「テレビ放映権」が関係しているとされています。すなわち野球やアメフトなどのテレビ視聴者が多い秋季を避け、夏場にオリンピックをもってこよう、というビジネス上の利便性を優先しているらしいのです。つまり選手側の安全性やパフォーマンスよりも、ビジネスの都合を第一に考える、という現実があるようです。

さて前回は、夏バテや熱中症を招く要因の一つに「汗」をかけなくなったことが挙げられること、また汗をかく目的は主として「体を冷やす」ことである、と説明しました。
人間は他のあらゆる動物に比べ、派手に汗をかくことが見て取れますが、これは一つには、暑さに弱い「脳」を守るためである、という見方が広まっています。
人間の体温は36.5℃付近と決まっていますが、これは哺乳類の中ではかなり低めの温度設定です。比較的低い猿と馬でも37℃台である以外は、犬、猫、牛は38℃台、ウサギ、ヤギ、羊、豚は39℃台で、鳥類にはなりますがニワトリは41℃台と、いずれも人間より明らかに高い体温です。

そもそも動物の体温の適正レベルは、どのような範囲にあるのでしょうか。体内で各種の化学反応に関与する「代謝酵素」が効率よく働く温度というものがあり、それは大体36℃から42℃くらいの間、とされています。
この範囲を大きく超えると酵素が働かなくなり、体内の化学反応も止まってしまうのです。よく観察すると、上記のような諸動物に固有の体温は、この範囲内にちょうど収まっているのが分かります。

人間が36℃台という、異例ともいえる「低めの体温」を受け入れている理由の一つとして、「脳の発達」が挙げられています。人類は猿から分かれて進化した後、脳を顕著に発達させて言語や文明を生み出しました。人間が他の動物とは異なり、頭脳を駆使して考え、額に汗して働いたため、近代文明を構築することが出来たのです。
但し脳はコンピューターと似て、熱に弱いという問題点があります。「熱にうなされてうわごとを言う」というのは、熱に弱い脳の性質を物語っています。そのような事情で人間は、脳を守ることを最優先とし、代謝酵素が機能するギリギリの36℃台という「低めの体温」を受け入れてきました。

一方で、このような低い体温により、割を食っている場所が体内にはいくつもあるのです。その代表格が「胃腸」です・・(続く)

蒲田よしのクリニック