院長の吉野です。こんにちは。
それにしても、すっかり寒くなってきました。東京でも朝晩は零度前後まで気温が下がり、12日には例年より9日も遅く初雪を観測しました。そして本日18日の早朝に大雪が降って東京でも10cm近い積雪となり、電車など交通に乱れが発生しました。
この冬は明らかな暖冬傾向でしたが、ここにきて急速に寒さが増しています。シベリア方面からの寒波が次々と南下している模様です。昨年から強力なエルニーニョ現象が続いており、これが記録的な暖冬に繋がっているとされていましたが、そのエルニーニョもそろそろ終息に向かいつつあると観測されています。

そもそも暖冬だからといって良いことばかりではありません。スキー場は雪があまりにも少なく、なかなかオープン出来ない所も多かったと聞きます。湖に氷が張らないため、冬の風物詩となっているワカサギ釣りが出来ない、という報道もありました。冬物のコートやブーツ、スキー板などは売れませんし、キャベツなどの野菜は育ち過ぎて腐敗したり、安値で叩き売られたりしています。
従って、ここにきてようやく冬本番というのは自然な流れであり、ある意味で喜ばしくもあります。スキー場には待望の雪がたっぷり降るでしょうし、湖でもワカサギ釣りがやっと楽しめます。経済面でもスキー板やコート、灯油などの売行きが上がり、野菜などの価格も回復すると思われます。何より寒い方が、いかにも「冬らしい」といえるのではないでしょうか。

このように遅れ馳せながら本格的な冬を迎えた訳ですが、暖冬の影響で影を潜めていたインフルエンザが、ここにきて急速に流行が拡がっております。国立感染症研究所の発表では、1医療機関当たりのインフルエンザ患者数が、ここ1週間で0.89から2.02と一気に2倍以上となりました。1を超えると流行入りという目安がありますが、待ってましたとばかりに本格的な流行となった模様です。
蒲田よしのクリニックに於いては連日のように風邪の方が来られ、薬の処方やマイヤーズカクテルなどのビタミン点滴を受けられていますが、インフルエンザの方はまだ殆んど来られていません。ただその兆しはあります。これまでは暖冬を反映して鼻風邪など熱の出ない風邪が主体でしたが、ここ数日は38度くらいの発熱を伴なった風邪が目立ってきました。インフルエンザの流行は時間の問題である、と実感しています。

前回のコラムで、風邪の予防にはビタミンCなどの栄養素がたいへん有効である、とお話しました。そういう話をすると「私はビタミンのサプリメントを飲んでいるから大丈夫だ」とか「ビタミンCをたっぷり摂っているのに風邪をひいてしまった」などと、ビタミンに頼っているような方を時々お見受けします。ビタミンは確かに重要で不可欠なのですが、どうやらそれだけでは何かが足りないようです。
一方で前回も説明した通り、野菜や果物をたくさん食べる方が風邪をひきにくい、というのは統計的にも確かなようです。そうだとすると、野菜や果物にはビタミンが豊富に含まれているのはもちろんですが、それ以外にも風邪の予防に役立っている成分がある、ということを意味しています。それには多くの種類がありますが、一言でいうと「抗酸化成分」という、体の酸化を抑制する一群の栄養素が重要な役割を果たしています。

我々は経験的にも、新鮮な野菜や果物をたっぷり食べると、体が洗われたような、軽くなったような感覚を味わいます。言い換えると「疲れがとれた」と感じるのです。これは食材に含まれる各種の抗酸化成分が、酸化した脂質やタンパク質などの成分を処理し、細胞や組織を酸化から守っている結果、疲労の原因となる物質が減少したことにより生じます。いわば抗酸化成分は、体の「サビ取り」とも言えるのです。
抗酸化成分の例としては、トマトなどに含まれるリコピン、大豆などに含まれるイソフラボン、緑茶などに含まれるカテキンなどの他、ベータカロチン、アルファリポ酸、コエンザイムQ10、グルタチオン、レスベラトロールなど多数が知られています。またビタミンCやビタミンEも、主要な抗酸化成分に名を連ねています。このような抗酸化成分を、各々の食材が固有の配分で含有しているのです。

抗酸化成分は一般に、動脈硬化の抑制や神経の再生、がんの予防などに貢献していることが証明されていますが、風邪との関係はあまり知られていません。ただ近年では、風邪やインフルエンザなどウイルス感染症の予防に関して、抗酸化成分の果たす役割が注目され始めています。体の酸化が進むと免疫力が著しく低下してしまうことが、最近の研究で証明されているのです。
我々の体内では毎日のように、多くの不良タンパク質や過酸化脂質など有害物質が作られているのに加え、外部から重金属や有機溶剤、各種薬品、食品添加物、ダイオキシンなど様々な有害物質が入り続けています。そのため体は有害物質で埋め尽くされてしまいかねませんが、それを防ぐ仕組みがあるのです。細胞内外の「解毒酵素」や各種「抗酸化成分」がそれを担っています。
解毒酵素や抗酸化成分はそれだけでなく、体内に侵入したウイルスや細菌など病原体の排除にも一役買っています。病原体も一種の異物ですので、解毒の対象となる訳です。もし体内が酸化物質など有害な成分で覆い尽くされている場合には、ウイルスなど病原体の排除が後回しになり、感染しやすくなります。反対に有害物質が少ない状態ならば、ウイルス等の排除に余裕が生まれるのです。

従って風邪やインフルエンザ予防のためには、体内を常に「きれいな」状態に保っていることが大切となりますが、現状で我々の体は果たして「きれいな」状態といえるのでしょうか・・(続く)

蒲田よしのクリニック