院長の吉野です。こんにちは。蒸し暑い日が続いていますが、皆さま元気でお過ごしでしょうか。

参議院の選挙が終わったと思ったら、東京では今度は都知事選挙が始まりました。一たん静かになった街頭が、再び賑やかになっています。選挙の候補者はもちろん支援者、選挙を管理する職員の方々は、この暑さの中で本当に大変だと思います。
最も大変な自治体の一つが、多摩地区にある狛江市です。ここでは参議院選挙に先立って市長選挙がありました。そのため狛江市では、都知事選を含め「トリプル選挙」という事になりました。市の担当者がテレビのインタビューで、キャンプに行く予定を諦めた、と話していたのが印象的でした。

夏場に選挙が行われるのは珍しい事ではありませんが、これだけ続くのは少し異例です。選挙は候補者による街頭演説を始めとして、街角の練り歩きと握手作戦、戸別訪問、さらにはポスター貼りなど、暑い屋外での作業が多数あり、厳しい体力勝負です。暑さに弱い、或いは体力がないような候補者では、ライバル以前に暑さに負けてしまうことになります。
ただ実際には、夏バテや熱中症でリタイアした、あるいは救急車で運ばれた、という候補者は、あまり聞いたことがありません。選挙に打って出るような政治家というものは、やはり健康管理がしっかりしている、或いはタフな肉体の持ち主が多いのでしょうか。相手に勝つ前に、先ずは自分自身に勝つ、という心意気が必要なのでしょう。

さて前回は、梅雨明け前にもかかわらず蒸し暑い日が続き、熱中症患者や夏バテの方が増えていること、そして今年は高気圧の勢力が強く、例年にも増して暑く長い夏になりそうだ、とお話しました。
その後やや気候の状況が変化し、西日本では梅雨明けして暑い日が続いている一方で、関東など東日本では梅雨明けが遅れ、7月も下旬に入り若干涼しい天候となっています。これは太平洋高気圧が西日本に張り出しているのに比べ、関東地方などには北東からの涼しい風が吹いているためです。
いわゆる「東冷西暑」の気圧配置となっている訳ですが、太平洋上から北東の風が東日本に吹き続けた場合、昔から「ヤマセ」と呼ばれ恐れられてきました。これは東北から関東の太平洋側にかけて冷害をもたらす低温の気団ですが、近年の猛暑傾向に隠れて久しく姿を現しませんでした。

とはいえこのような時ならぬ涼しい天候も、そう長くは続かないようです。東日本でも冷夏となる予報はなく、西日本ほどではないものの、そこそこ暑い夏となるのは間違いない模様です。内陸部を中心に、けっこうな猛暑となることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
一方で西日本は、すでに猛暑傾向が明らかです。沖縄・九州から近畿、東海にかけては連日30℃以上となっており、35℃以上の猛暑日も珍しくありません。熱中症や水の事故も多発しています。

ところで前回、夏バテや熱中症になりやすい人に共通するパターンの一つに「元々の体温が低い」という事がある、とお話しました。人間の正常な体温は36.5℃とされていますが、実は特に女性を中心に、36℃前後や35℃台という低体温の方が非常に増えています。中には34℃台という極端に低い方も珍しくありません。
また腋の下で測る一般的な体温は36.5℃前後と決して低くないものの、手足や下半身の自覚的な「冷え」に悩まされている方は少なくありません。このような方は多くの場合、上半身の体温は低くない一方で、手足や下半身などが冷えている、いわゆる「末端冷え」あるいは「下半身冷え」などと呼ばれています。

低体温や冷えがある人は一般に、慢性的な疲労や不眠、肩凝り、腰痛、生理不順や生理痛などに見舞われやすい傾向がありますが、それと伴に熱中症や夏バテにも罹りやすい、とされています。
すなわち日常的に体が冷えている人というのは、体温調整がスムーズにいかないために、にわかな高温環境では容易に熱中症にかかり、一方では長期にわたる暑さで体調を崩し、夏バテに陥りやすいのです。

そのように熱中症と夏バテとは、まさに表裏一体の関係となっているのですが、なぜ現代人は体が冷えてしまい、夏の暑さに弱くなってしまったのでしょうか。それは一つには「汗」を上手くかけなくなってしまった、ということが指摘されています。確かに我々は以前に比べ、汗をかく機会が少なくなっているのではないでしょうか。
汗というものは現代に於いて、ともすれば邪魔もの扱いされがちです。汗はベタベタした感触をもたらし、また特有の臭いがあります。とりわけ都市部に住む人間は、汗をかくことがあまりカッコ良い現象と感じていません。スポーツやサウナなどは別として、我々は出来るだけ汗をかかずに済むよう行動している、とさえ言えるでしょう。

ところが汗をかく意義というものを考えると、「汗をかけない」という事の危険性を感じずにはいられません。というのは、汗のもつ重要な機能の一つに、体の「冷却装置」である、という事が挙げられるからです・・(続く)

蒲田よしのクリニック