米国では与党民主党の地盤であるバージニア州の知事選で、民主党の候補が予想外の敗北を喫するなど、米国政治の動きが慌ただしくなってきました。来年の中間選挙で民主党の議席が大幅に減少した場合、バイデン政権が一気に不安定となる懸念も出ています。

 

それに対して野党共和党の勢いが増しています。バージニア州知事選で大勝しただけでなく、全米各地で同時期に行なわれた各地方選挙に於いて、大半の共和党候補が勝利したのです。まるで民主党の支配をひっくり返し、政権を奪還しようという勢いです。

 

ただ共和党の勢力が盛り上がってきた最大の要因は、何といっても「トランプ人気」です。共和党の集会は、どこへ行っても前大統領のトランプ氏に対する人気の高さが突出しています。共和党は、まるで「トランプ党」へと化けてしまったかのような変貌ぶりです。

 

本コラムは選挙の予想を行なうものではありませんので、その話題はこのくらいに留め、ここではトランプ氏の「健康に関するエピソード」について、簡単に触れておきたいと思います。とはいっても現在の健康問題ではなく、昨年の「新型コロナ感染」についてです。

 

トランプ氏は昨年2020年10月に「新型コロナ」に罹患し、一時は呼吸困難を伴う重篤な状態に陥り、人工呼吸器の装着まで検討されたといいます。しかし数日のうちに急速に回復し、あっという間に退院してホワイトハウスに帰還し、世界中を驚かせました。

 

そういう驚異的な回復の速さの秘訣は、一つには医師団が投与した多量の「ビタミンC・ビタミンD・亜鉛」だと言われています。米国などでは日本とは異なり、昨年10月頃までには治療プロトコールにビタミンCなどを含めるのが、一般的なものとなっていました。

 

トランプ氏に限らず、ビタミンCやビタミンDなどの栄養素を投与されて、重症のコロナ感染から回復した方は少なくありません。重症でなくとも、軽症のうちにこれらを投与して重症化を免れ、或いは早期に治癒できた事例は世界中で数多くあると報告されています。

 

コロナ感染にビタミンCなどの栄養素がたいへん有効であるとする学術論文が世界中から公開され、今や数千から数万件に達しようとしています。国によっては、政府が国民の感染予防の目的で、ビタミンCや亜鉛などのサプリメントを配っている所もある程です。

 

国際オーソモレキュラー医学会では早くも2020年2月の段階で、コロナ感染の治療および予防の目的で、ビタミンCとビタミンD、亜鉛、マグネシウム、セレンなどの微量栄養素を、食事およびサプリメントとして充分量を補給する事を、世界に向けて推奨しています。

 

これに対して日本では、コロナ感染を診療する病院の現場でビタミンCやビタミンDなどを投与しているという話は全く聞きません。またニュースや新聞などでも栄養素の摂取を推奨するような報道もなく、むしろそれを否定するような主張ばかりが目立ちます。

 

そういう日本に於ける特殊事情はさておき、なぜコロナ感染にビタミンCやビタミンDなどの栄養素が効くのでしょうか。これには様々な要素があるのですが、ごく単純化していうと、各種の栄養素が我々の「免疫力」を向上させている、という要素が最重要です。

 

免疫力には幾つかの側面があり、皮膚や粘膜を強くして細菌やウイルスなどの侵入を阻害するという側面、免疫を担当するリンパ球などの細胞の動きや活動を強化するという側面、それに付随する炎症の暴走を防ぎ身体の消耗を防ぐ、など多くの側面があります。

 

ビタミンDや亜鉛などの栄養素は、各々の持ち味や守備範囲はあるものの、様々な側面をもつ「免疫力」というものを、全体として強化し充実させます。その結果コロナを含むウイルス感染症に対し、その治療や予防に関して有効性が証明されているのです。

 

これらの栄養素の感染症に対する有効性を証明する研究は多数ありますが、ほんの一例を挙げると、南米チリで大学の運動部員に対するビタミンCの風邪予防効果を検証した研究が有名です。研究の結論は「風邪の予防にビタミンCは有効である」というものです。

 

具体的には、大学の体育施設で10日間の運動プログラムが行なわれ、計700名あまりの学生を2群に分けました。一方の群では風邪症状の現れた学生に風邪薬や解熱剤を投与し、他方の群では風邪症状の有無に関わらずビタミンCのサプリを投与しました。

 

すると風邪薬や解熱剤を投与された群ではプログラム期間中を通して風邪症状の発生数が増減を繰り返したのに対し、ビタミンCを投与された群では風邪症状の発生数が日を追って減少し、プログラム中盤の6日目までには殆んどゼロまで減少してしまいました。

 

この研究からは、風邪薬や解熱剤には風邪を予防する効果は殆んどなく、ビタミンCには明らかな風邪の予防効果がある、ということが出来ます。同様にビタミンDや亜鉛などの栄養素に関しても、風邪を予防する効果が認められるとする研究結果が多数あります。

 

ビタミンCや亜鉛などの栄養素は実は、最近特に問題となっている「コロナ後遺症」に対しても非常に有効に作用する事が、次々と報告されています。すなわち風邪に罹らないようにするだけでなく、風邪を早く治して体調の回復を促進するような効果もあるのです。

 

前回までのコラムで、コロナ後遺症は免疫の異常から自律神経など神経機能の障害を引き起こし、微小血栓がそれに拍車をかける、などと説明しました。このような病態は過去に、SARSの後遺症や子宮頸がんワクチンの副反応などでも報告された経緯があります。

 

新型コロナやSARSなどの後遺症の本態は、一つにはME/CSF(筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群)であるとされていますが、これによる免疫異常と炎症、神経障害などが病態の主体となっており、それらをどう回復させるかが、治療の焦点の一つとなるのです。

 

前回のコラムではEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という魚油を含むオメガ3系油脂が、免疫異常と炎症、神経障害を回復させる作用がある、などと説明しました。それと並んで有効なのがビタミンCや亜鉛などの微量栄養素なのです。

 

ビタミンCなどには免疫力を強化する作用がある、と前述しましたが、それと並んで「免疫の暴走」を抑制する効果も証明されています。つまり免疫力を向上させるだけでなく「過剰な免疫」をも抑制し、炎症を程よいレベルに調整する効果があるのです。

 

免疫を適正なレベルに調整し炎症を制御する作用があるため、花粉症や喘息などのアレルギー疾患、あるいはリウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患に対しても、ビタミンDや亜鉛などの栄養素が有効に働く、などという研究結果も多く報告されています。

 

それと並んでビタミンCや亜鉛などには「神経機能の改善」という効果も知られています。自律神経失調症やウツ、不眠などメンタル不調、パーキンソン病など神経変性疾患などに対するビタミンCなどの有効性は、これまで世界中から多数の報告が出されています。

 

以上のように免疫異常や炎症を抑制して神経機能を向上させる、などというビタミンCやビタミンD,亜鉛などの栄養素の有効性を説明しましたが、それらの栄養素を、具体的にはどのくらいの量、どのような形で補給する必要があるのでしょうか・・(続く)

蒲田よしのクリニック