去る10月10日にZOOM開催の『新型コロナ後遺症/ワクチン副反応の治療と予防の実際を共有するフォーラム』に於いて、私も15分ほどコロナ後遺症についてプレゼンテーションを行ないました。10月17日までの期間限定ですので、お早めにご覧ください。

https://www.kodomocorona.com/2021/10/11/1010douga/?fbclid=IwAR0YE1aSbozL1EbKlct5SBzhoeW-Dg_KKd0U4ubxhiLKZfaDcFRabyGVhzg

 

このフォーラムで講演し、参加者の皆さんの反応を見て痛感したのが、「コロナ後遺症およびワクチン副反応」に関する深刻な関心、そして有効な治療法への強い期待です。応募者が1000人を超え、ライブ参加者も600人超となった事からも、それは分かります。

 

本コラムで繰り返しお話しているように、コロナ後遺症およびワクチン副反応の問題は、コロナの新規感染者が減りつつある昨今でも、いよいよ深刻化してきています。コロナ後遺症だけでなく、ワクチン副反応に関しても近々まとまったお話をしたいと思います。

 

さて前回までは、コロナ後遺症との深い関係性が指摘されている「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CSF)」について、既存の治療ガイドラインで紹介されている研究の評価も参考に、有効性が期待できる治療法について、私の経験も交え解説してきました。

 

前回までのコラムで、抗うつ薬や漢方薬、運動療法、温熱療法などの治療法が、個別のケースレポートでは有効性が散見されるものの、症例数の少なさや観察期間の短さ等が災いし、明らかな有効性が証明されるには至っていない、という現状をお話しました。

 

抗うつ薬などの薬物は別として、運動や温熱、栄養などの治療法は、副作用もなく幅広い効果が期待できる反面、特定の症状が軽減するなどの治療効果が短期間では明瞭に表われにくいという特徴があります。そのため「統計的有意差」が一般に出にくいのです。

 

とはいえ我々の日常感覚からしても、適度な運動や入浴などの保温、食事の工夫や栄養補給などの取り組みは、慢性的な疲労やメンタル不調、慢性的な痛み等の症状に対し、個人差は大きいものの、或る程度の効果を期待できる方法として認知されていると言えます。

 

さて今回は、ME/CSFに対する「栄養療法」ついて説明します。ME/CSFに対しては世界各地で食事の改善や栄養補給などの取り組みがなされ、一定程度の有効例が散見されたものの、やはり有意差を持って有効性を認められた、という報告はありませんでした。

 

栄養療法に関して、比較的良い評価を得た栄養素および食品が幾つかあります。それはニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NAD)やコエンザイムQ10、プロバイオティクス食品類(乳酸菌等含有食品)などです。これらは「改善効果あり」との評価が得られたのです。

 

これらは酸化還元反応や抗酸化作用、腸内環境の維持などに関わる栄養素あるいは食品で、疲労回復や自律神経の安定、抗アレルギーなど幅広い効能が知られていますが、これらは少ない症例数ながら「ME/CSFに有効である可能性がある」という位置付けです。

 

ME/CSFの多彩かつ慢性の諸症状に対し「栄養」というアプローチをとる場合、これらNADやコエンザイムQ10、プロバイオティクスなどを用いるのは有用な方法といえます。しかしながら病態を改善させる可能性のある栄養素は、他にも様々なものが存在します。

 

例えば自律神経を安定させるためには、鉄や亜鉛などのミネラル、それにビタミンB群などが有効に働きますし、自己免疫反応および炎症を沈静化させるには、ビタミンDやビタミンC、それにEPAやDHAなどオメガ3系脂質などの有効性が証明されています。

 

日常臨床の経験から言っても、ウツなどメンタル不調や自律神経失調症では鉄欠乏、ビタミンB群欠乏など栄養バランスの乱れが高頻度で認められ、一方アレルギーや慢性炎症、風邪をひきやすい等の問題のある方では、ビタミンDやビタミンCが欠乏しがちです。

 

さてME/CSFの治療ガイドラインに於いて、各種ビタミンやミネラル等の栄養素を、食事の改善やサプリメント等の方法で補給する治療的な研究が数多く進められましたが、散発的に有効例は幾つも見られたものの、統計的な有意性を獲得するには至りませんでした。

 

なぜこのような曖昧な研究結果となってしまうかについては、幾つかの理由が考えられます。先ず「研究デザイン」が厳密でない可能性。投与群と対照群との間で栄養素などの投与量などが統一され、他の治療法が排除されていないとクリアな結果が出にくいものです。

 

一方で栄養素の「投与量」そのものも重要です。病態の改善に栄養素が働くとしても、その投与量が充分でなければ、明らかな効果が出ない場合が少なくありません。その「投与量」というのは、一般的な食事等による投与量とは一桁も二けたも違う場合があるのです。

 

一般的な血中濃度よりもはるかに多い投与量を「メガドーズ」あるいは「薬理学的投与量」などと表現し、通常量に比べて顕著な臨床的効能が得られる場合が少なくありません。例えばビタミンCをメガドーズとして投与すると、強い抗酸化作用などが期待できます。

 

実際の栄養医学に関する研究現場に於いて、特定の栄養素や機能成分の医学的な有効性を調べた研究で「有意な効果は認められなかった」という結果が出た場合、その栄養素や成分の投与量が実は「ごく一般的なレベル」であった、というケースが少なくありません。

 

そのように凡庸な結果に終わった栄養素や成分を、通常よりも一桁か二けた多い「薬理学的量(=メガドーズ)」を投与すると、今度は顕著な医学的有効性が認められた、という事例は多いものです。つまり投与量により、得られる結果には雲泥の差が生じ得るのです。

 

こういうメガドーズの栄養素を投与した医学研究は未だ少ないのが現状ですが、各分野で顕著な有効性を認める研究結果が出始めています。例えばガンに対し「高濃度ビタミンC」を点滴で投与すると、ガンの縮小や消失といった顕著な臨床成績が得られています。

 

一方でウツなどメンタル不調の患者に於いて、鉄やビタミンB群など栄養バランスの乱れが認められた場合、メガドーズのビタミンやミネラル等の栄養素を投与した結果、ウツ等の症状が顕著に改善して休職中の社員が復職できた、という事例が少なくありません。

 

そこでメガドーズによる栄養素の投与も視野に入れてME/CSF、さらにはコロナ後遺症に対する治療方針を組み立てていくと、全く違った展開になる事が分かります。次回以降は、その詳細について説明いたします・・(続く)

蒲田よしのクリニック