院長の吉野です。こんにちは。連日うだるような暑さが続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

7月半ば過ぎには関東地方あたりで涼しい日が続きましたが、8月に入る頃から厳しい暑さとなっています。西日本だけでなく東京でも、35℃前後という猛暑の日が続いているほか、山形や秋田などの東北地方、さらには札幌などの北海道でも、30℃以上の高温が続出しています。
7月下旬に現れた「オホーツク高気圧」によって東日本の太平洋側に北東風が吹き、一時的に低温傾向となりましたが、8月に入りオホーツク高気圧は衰弱し、典型的な盛夏の気圧配置となりました。昨年ほどではないものの、かなりの猛暑となってきたようです。
この暑さの影響もあり、夏バテや軽い熱中症の症状、或いは夏風邪や胃腸炎の症状に見舞われて、蒲田よしのクリニックを受診する方が増えています。症状は十人十色ですが、共通項として皆一様に「だるい」とおっしゃいます。そして多くの方が、マイヤーズカクテルを始めとしたビタミンの点滴を受け、大なり小なり元気になって帰られます。

ところで、いよいよリオデジャネイロ・オリンピックが始まりましたね。準備の遅れや治安の悪さ、政治の混乱などのため、開催そのものさえ危ぶまれていましたが、何とか開催にこぎつけました。選手や関係者はもとよりスポーツファンなど、心待ちにしていた方はたいへん多いものと思います。
オリンピック会場に行けない方は、私を含め、テレビなどで観戦することになります。アスリートの熱いプレーを観戦するのはもちろん楽しみですが、気になるのは「時差」です。南米のリオデジャネイロは日本からみて地球の裏側であるため、日本時間で深夜または早朝に試合が行われるケースが多くなります。
そのために、夜遅くや朝早く、或いは夜通しでテレビにクギ付けとなる方も多いのではないでしょうか。もちろん録画して後から見るという方法もありますが、結果を知ってから見るのと「ライブ」で見るのとでは、やはり臨場感や感動が違います。そのためひどい寝不足に陥り、夏バテを悪化させる方も多くなりそうな予感がしています。

さて前回のコラムで、夏バテや熱中症を予防する上で「汗」が重要な意味を持つ、というお話をしました。汗というのは夏場に盛んになる生体現象の一つですが、ややもすると不快な現象と受け止められがちです。すなわち「ベタベタして気持ち悪い」とか「汗臭い」などと、ネガティブなイメージが優勢となっています。
しかしながら、汗というものは体温を調節する上で決定的な役割を果たしており、また体調を維持する点に於いても、重要な要素です。すなわち汗をかく量が少ない、もしくは質の良くない汗をかく、という方は、体温調節が上手くいかなくなり、その影響で体調を崩しやすくなってしまうのです。

そもそも我々は何を目的に「汗」をかくのでしょうか。適度に汗をかいた直後に風が吹くと、我々は涼しく感じるものですが、その時は体温がわずかながら低下しています。すなわち我々は汗を、第一義的には「体を冷やす」ためにかいているのです。良質かつ十分な汗をかけないことは、体温調節機能の破綻に直結し得ます。
たとえて言うと、汗は「打ち水」と似たような効果を発揮します。ひと昔前には暑い日の昼下がり、玄関先や軒先などに水をパッとかける打ち水の光景がよく見られたものですが、これは水が蒸発する際に熱を奪う「気化熱」の原理を応用した、生活上の知恵と工夫です。打ち水をすると、確かに涼しく感じるものです。

そういえば、人間ほど汗をよくかく動物はいないのではないでしょうか。例えば犬などは、暑い時に舌を出してハーハーさせていますが、汗をダラダラかいている姿は見られません。同じ霊長類でもサルは、人間ほど汗をかいていません。汗は人間が進化とともに発達させてきた、いわば「人間らしい」機能といえるのです。
いかなる動物であっても、暑い環境では熱を放散することが必要不可欠です。そうしなければ、体が過剰な暑さで参ってしまうからです。熱を放散する方法には様々なものがありますが、その中で人間は「汗をかく」仕組みをことさらに進化させてきました。実際にエクリン腺などの汗腺は、人間が突出して発達しているとされています。

なぜ人間は、汗腺を特に発達させてきたのでしょうか。それは主として、人間がとりわけ「脳」を進化させてきたためです・・(続く)

蒲田よしのクリニック