(続き)・・5月は早くも月末を迎えましたが、真夏のような暑さとなっています。東京なども連日30℃近い暑さで、木陰や軒下のような涼しい場所を選んで歩く人が目立ちます。驚いたのが北海道に於ける季節はずれの暑さで、オホーツク海側の遠軽では29日に33.7℃という記録的な高温に見舞われました。
5月初めの長期予報では、この夏はエルニーニョ現象の発生により、北日本を中心に「冷夏」となる予想でしたが、このところの暑さをみると、どうやら例年とそう変わりない暑さとなりそうな予感がします。

今年に限らず、近年は地球温暖化の影響もあって猛暑の夏が続いており、しばらく我々は涼しい夏を経験していません。従って冷夏という予想が出されても、そう簡単にイメージしにくくなっています。
予報通り涼しい夏となる可能性も否定できませんが、昨年の異常な暑さを思い出すまでもなく、この夏も同じような暑さとなる、と予想して備えておいた方が良いでしょう。昨年は記録的な数の「熱中症」患者が発生しました。猛暑というほどではない今のうちに、充分な備えをしておきたいものです。

さて蒲田よしのクリニックには連日のように「プラセンタ注射」を受けにくる方が多数おられ、その数は徐々に増えてきています。注射用の胎盤エキス製剤であるプラセンタは、更年期障害の女性をはじめとして、慢性的な疲労や肩凝り、アレルギー、肝機能障害、さらには美容などに幅広く効果があり、最近は男性の方も増えてきています。
そのプラセンタに関して、4月から5月にかけて重要な学会、研究会が二つ続きました。いずれもプラセンタの臨床的な応用に関して研究と啓蒙活動に取り組んでいる「日本胎盤臨床医学会」の主催です。一つは同医学会の「春季総会」で、もう一つは「プラセンタ・ツボ注射セミナー」です。

日本胎盤臨床医学会の総会は、春と秋の年2回行なわれます。春は東京で、秋は地方で開催される慣習があり、春季である今回は東京で開かれました。総会にはプラセンタ療法に取り組んでいる、または関心のある医師、歯科医師、獣医師などが中心に参加するほか、プラセンタの製剤やサプリメントなどのメーカー、あるいは代替医療やアンチエイジング医療に関わる業者が多数出席します。
その中で、今回とても印象的だったことがいくつかありました。一つは参加者数が急増したことです。参加者数は年々増加する傾向にはありますが、今回の増え方は尋常ではありませんでした。百数十人が入れる会場では狭すぎるため、急きょ一回り大きい会場に変更となりました。恐らく200人は超えたと思われます。それだけプラセンタ療法への関心が急上昇している表われだと実感しました。

それと並んで印象的だったのは、会がかなり「国際的」になってきた、という点です。というのは、講演のスピーカーも含めて10人近くのロシア人が会に出席しており、ロシア語の同時通訳が常時マイクに向かっていたのです。英語の同時通訳はよく見かけますが、ロシア語というのはかなり珍しいと感じました。
プラセンタの学会にロシア人が参加するのは、実は歴史的にも合点のいくことです。というのは、プラセンタ療法の生みの親の一人はロシア人なのです。旧ソ連時代の1930年代に、ロシア人医師フィラトフが胎盤および臍帯を乾燥させ、皮下に埋め込む「プラセンタ埋没療法」を開発しました。
戦後、日本を含めプラセンタの注射製剤が作られましたが、その大元はこのロシア人による埋没療法がルーツなのです。その影響もあり、ロシアではプラセンタの研究と臨床がかなり盛んです。症例数でも日本に次ぐ治療実績と言われています。

総会の冒頭では、プラセンタ製剤のメーカーであるメルスモン株式会社の研究者から、更年期障害の女性513例を対象とした臨床研究の結果が発表されました。それによると、更年期障害に伴う症状が、週1~2回のプラセンタ注射によって軒並み70%以上の有効率で奏功した、という結果でした。私の臨床経験でも、更年期障害の7割以上が有効と考えていますので、それが臨床研究によって裏付けられた形となりました。
ロシアの研究者からは2件の発表があり、更年期障害、不眠症、そして不安神経症などメンタル不調に対するプラセンタ注射の優れた効果が認められました。近年ロシアも含め海外からも、プラセンタの素晴らしい効果が続々と出てきており、プラセンタの人種を超えた有効性が証明されつつあります。日本はある意味で「プラセンタ先進国」ではありますが、これからは国際的な共同研究が求められそうです。

もう一方の「プラセンタ・ツボ注射セミナー」に関しては、別の意味で大きな収穫がありましたので、日を改めて詳しく解説いたします・・(続く)

蒲田よしのクリニック