9月に入り、東京などでは雨が断続的に降っており、また急に涼しくなりました。8月は月末まで連日の猛暑だったのが嘘の様です。最高気温が25℃に達しない日も多く、天気予報では9月を通り越し、10月並みの涼しさと報じていました。

毎年の事ですが、秋口の9月は体調を崩す人が多い傾向となっています。今年は特に天候の変化が大きいため、蒲田よしのクリニックにも連日のように怠さ、めまい、頭がボーっとする、動悸、不眠、憂うつ感など、多彩な症状を訴える方々が来院してきます。

さて昨年から急増が続いている「コロナ後遺症」の症状は、実に多岐にわたります。報告されている主な症状だけでも、全身倦怠感、不眠、憂うつ感、不安感、食欲不振、めまい、頭痛、動悸、息切れ、味覚および嗅覚障害、脱毛、集中力の低下などと、それこそ枚挙に暇がありません。

そのような諸症状を俯瞰すると、コロナウイルスの主病変である呼吸器系だけでなく、神経系、消化器系、循環器系、感覚器、皮膚および毛髪など、全身の組織に拡がっている事が分かります。しかも多くの人は単一の症状に留まらず、これら多系統に及ぶ複合的な症状に苦しんでいるのです。

そのような現状があるために、症状に合わせて薬の処方などを行なうのも一苦労です。例えば不眠には睡眠導入剤、頭痛には鎮痛剤、めまいには抗めまい薬、食欲不振には胃腸薬などを処方する訳ですが、症状の数が多ければ必要となる薬の種類も増え、副作用の問題も加わり、体には大きな負担となってしまいます。

従って、コロナ後遺症の「原因」を特定し、それを解消するような治療法を開発し普及する事が王道となりますが、それが大変な難問となっているのが現状です。世界中の医師や専門家がコロナ後遺症の原因を探索し、治療法を模索していますが、今のところ決定打がない、というのが厳しい現実なのです。

そのような状況下、コロナ後遺症の主要な原因の候補としては、以下のような要因が挙げられています。

第一に、コロナウイルスの急性感染後に、各組織に於ける「慢性の炎症」が続いている影響ではないか、という説があります。つまり当初は急性だった感染や炎症が結果的に慢性化して、月単位あるいは年単位に及ぶ症状が続いている、というのです。あたかも急性肝炎をこじらせて、慢性肝炎に移行したような構図です。

次にコロナウイルスに対する「免疫反応」が、各組織に対して慢性炎症を引き起こし、それが症状を長引かせているのではないか、という説もあります。つまりウイルスを攻撃するリンパ球などの免疫細胞や抗体タンパク、サイトカインなどが、各組織に対して慢性の炎症を発生させる、すなわち「自己免疫」が働いているのではないか、という説です。

さらにウイルス感染と炎症の影響で、全身の毛細血管に「血栓」が生じた影響である、とする説もあります。コロナウイルスはACE2受容体との親和性が高く、これがウイルスの侵入と関係しているとされていますが、この受容体とウイルスの結合が血管系に影響し、微小な血管内血栓を生じさせ、それが慢性の諸症状を招いている、というのです。

以上のような病態が働いているとすれば、根本的な改善のためのアプローチとしては、慢性炎症に対しては免疫力の活性化、自己免疫反応に対しては免疫力の調整や抗アレルギー、血栓傾向に対しては抗血栓アプローチなどが必要となります。またその基礎条件として、栄養バランスの是正や腸内環境の改善などの取り組みが求められます。

一方で、最近とりわけ注目されている説としては、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CSF)とコロナ後遺症との深い関連性が挙げられます。これについては次回ご説明したいと思います・・(続く)

蒲田よしのクリニック