ビタミンDは、脂に溶けやすい「脂溶性ビタミン」の一つです。私たちの皮膚には、日光(紫外線)を浴びることでビタミンDをつくる仕組みが備わっています。サケなどの魚類、干しシイタケ等のキノコ類などからも摂取できます。

 

ビタミンDは、以前から骨の形成や維持に欠かせない栄養素として知られてきました。しかし、ビタミンB群やビタミンCなどと比べると、一般にはあまり注目されず、健康維持やさまざまな病気との関係についても、広く知られているとはいえませんでした。

 

ところが近年、世界中でビタミンDの研究が進み、骨の健康だけでなく、免疫機能や炎症、腸内環境など、私たちの健康に幅広く関わっていることが分かってきました。感染症、アレルギー、がん、精神的な不調、慢性疲労など、多くの分野でビタミンDの役割が研究されています。ビタミンDは、従来考えられていた以上に重要な栄養素なのです。

 

ビタミンDの研究が進んでいる分野の一つが、がんです。ビタミンDは、細胞の増殖や分化、免疫機能などに関わることから、がんの発生や進行との関連が世界各国で研究されています。ビタミンDの血中濃度と、特定のがんの発症率や予後との関連を示す報告もあります。

 

感染症の分野でも、ビタミンDは重要な研究対象となっています。2020年に新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した際には、ビタミンDやビタミンC、亜鉛などの栄養素と、感染リスクや重症化との関係が盛んに研究されました。ビタミンDは免疫細胞の働きや、病原体から体を守る仕組みに関わっているのです。

 

さて私が理事を務める一般社団法人「ワクチン問題研究会(JSVRC)」では、新型コロナウイルス感染後、あるいは新型コロナワクチン接種後に発症した筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME/CFS)の患者さんを対象に、ビタミンDに関する臨床研究を行いました。

 

ME/CFSは、強い倦怠感や疲労、思考力・集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状などが続き、日常生活に大きな支障をきたす病気です。十分に休んでも回復しない疲労や、活動後に症状が悪化することなどが特徴とされています。

 

この研究では、約90症例を対象に、ビタミンDを1日1,000 IU、3か月間投与し、症状の変化を検討しました。その結果、倦怠感、ブレインフォグ(頭に霧がかかったように感じ、思考や集中が難しくなる状態)、不眠、頭痛、自律神経症状などについて、対照群と比較して改善を示す結果が得られました。症状数の減少には統計学的にも有意な差が認められ、学会発表および論文投稿を行いました。

 

では、なぜビタミンDは、骨だけでなく、免疫や炎症、慢性疲労など、さまざまな健康上の問題と関係しているのでしょうか。その理由の一つとして注目されているのが、ビタミンDの持つ「免疫調整作用」です。

 

免疫は、細菌やウイルスなどの病原体から私たちの体を守るために欠かせない仕組みです。しかし、免疫の働きが強すぎたり、適切に調整されなかったりすると、アレルギーや自己免疫疾患などにつながることがあります。また、炎症は本来、体を守るための反応ですが、必要以上に長引けば、さまざまな組織に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

ビタミンDは、免疫細胞の働きを調節し、体内の炎症反応にも関わっています。このような作用が、感染症やアレルギー、自己免疫疾患などとの関連を考えるうえで重要とされています。さらに慢性的な炎症と精神的な不調、疲労などとの関係も研究されています。

 

もう一つ、近年注目されているのが、ビタミンDと腸のバリア機能との関係です。

 

私たちの腸は、食べ物から栄養を吸収するだけでなく、病原体や有害な物質が体内に入り込むのを防ぐ重要な役割を担っています。腸の内側を覆う粘膜には、細胞同士を密着させる「タイトジャンクション」と呼ばれる仕組みがあります。これは、いわば細胞と細胞の間をふさぐ接着部分で、腸のバリア機能を維持するために欠かせません。

 

このバリア機能が低下し、腸の内側から本来通過しにくい物質が過剰に通り抜けやすくなった状態は、「腸管透過性の亢進」と呼ばれます。一般に「リーキーガット」と表現されることもあります。腸管バリアの機能低下は、炎症性腸疾患などとの関係が研究されており、アレルギーや慢性疲労、精神的な不調などとの関連についても研究が続いています。

 

ビタミンDは、腸の粘膜細胞やタイトジャンクションの機能に関わることが知られています。ビタミンDが不足すると、腸のバリア機能に影響する可能性があり、反対に、十分なビタミンDを保つことが腸の健康維持に役立つ可能性が研究されています。

 

前述のME/CFSに関する臨床研究についても、ビタミンDの免疫調整作用に加え、腸管バリア機能などへの影響が関与している可能性は考えられます。ただし、今回の症状改善が腸内環境の変化によって生じたのかどうかは、今後の研究で明らかにしていく必要があります。

 

これほど幅広い働きを持つビタミンDですが、実際には世界各地で不足が問題となっています。日本でも、ビタミンDの不足は決して珍しいものではありません。

 

ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でもつくられますが、屋内で過ごす時間が長い生活や、日光を浴びる機会の少なさ、食事からの摂取量などが、体内のビタミンDの状態に影響します。ビタミンDを多く含む食品には、サケやサバなどの脂の多い魚、卵などがあります。

 

日本人を対象とした調査でも、ビタミンDの不足が広く見られることが報告されています。特に、女性で不足が多いとする調査結果が多数あり、日常の生活習慣や食事を見直すことの重要性が指摘されています。

 

ビタミンDの不足が気になる場合には、日頃の食事や生活習慣を振り返り、必要に応じて医療機関で血液検査を受けることも一つの方法です。食事や日光浴などの工夫と併せて、必要に応じ良質なサプリメントを利用するのも一つの方法です。

 

ビタミンDは、骨の健康を支えるだけでなく、免疫機能や腸のバリア機能など、全身の健康に関わる重要な栄養素です。まだ研究途上の分野も多いものの、その役割についての理解は着実に深まっています。日々の食事や生活習慣を通じてビタミンDの不足を防ぎ、自分自身の栄養状態に目を向けることは、健康維持のための大切な一歩といえるでしょう。

蒲田よしのクリニック