漢方医学では独自の病態および治療の体系があります。例えば風邪の治療にあたっては、その症状と同時に本人の体質、それに発症からの日数などの情報も考慮に入れて処方を決めます。体質に関して漢方は「証」という独自の指標をもっています。
体力が充実して体温が高く、病気への抵抗力がある人は「実証」、体力が弱くて体温が低く、病気への抵抗力が衰えている人は「虚証」と呼んでいます。
同じ病気、同じ症状であっても、実証の人と虚証の人に対しては、原則として異なった処方をするというのが漢方の考え方です。
漢方薬は基本的に、自然の生薬である甘草、桂枝、生姜、芍薬、柴胡、当帰、人参などのうち、いくつかの生薬を選んで配合したものです。
例えば下半身の冷えや神経痛、排尿障害などに用いられる八味地黄丸は、地黄、山茱萸、山薬、茯苓、沢瀉、牡丹皮、桂枝、附子という8種の生薬が使用されています。
漢方薬はこのように複数の生薬の混成であり、また個々の生薬自体が様々な作用をもつために、西洋薬に比べて幅広い効能を持つことが特徴です。反面で作用の発現が緩やか、かつ副作用の少ない傾向があります。
西洋薬というものは人体を「臓器別」に細分化し、肝臓ならば肝臓を治そうとします。また病気の原因を細菌やウイルスなど外来のものに求める傾向があり、それら「外敵」を退治しようとします。
これに対して漢方薬は、人間の身体や心を「全体」として把握し、臓器に関しても個々を別々に捉えるのではなく、むしろ臓器間の「相互作用」に着目します。また個人の「体質」を重視し、体質と症状とを両にらみで漢方の処方を検討します。
いわば「木」を見るのが西洋薬、「森」を見るのが漢方薬と言えます。当院では体質や個人差を重視した「漢方療法」を実施しております。